第110話「旅行と自発」 診断から3年7ヶ月
副腎皮質機能低下症と診断されてから3年7ヶ月、コートリルを頓服に切り替えて2年2ヶ月が経ち、日常生活は、ほぼコートリルを飲まずに過ごせるようになりました。そんな中で、9日間の海外旅行へ行きました。
今回の旅の目標も、「なるべく自発だけで乗り切ること」でしたが、どうしてもコートリルなしでは破綻する場面がありました。寒波の日本から、猛暑の南国リゾートへ移動する旅だったこともあり、気候変化に身体が慣れるまでに数日かかりました。
それでも、暑い環境で動ける範囲には限界があり、自分のポテンシャルと、この旅でどうしてもやりたかったことを天秤にかけながら過ごしました。判断を誤ると、翌日に影響が残り、コートリルが必要になることもありました。ただ、毎日コートリルを服用するのは避けたかったため、飲まずに過ごせる日を作り、副腎機能の抑制を避けることも意識していました。
今回から課金して使い始めたHRVのアプリも、とても参考になりました。どんな活動が自分にとって負荷になっているのかを客観的に知ることができ、リカバリーを優先したほうがよさそうなタイミングと、自力で過ごせそうなタイミングを推測しながら行動できたのは、自分の状態を知るうえで、良い試みになりました。
今回の旅で一番の課題だったのは、帰りの移動でした。少し長めの滞在による疲れと、帰国前のパッキング、トランジットを挟む深夜便での移動による負荷は、それなりに想定していました。
ただ、かなりギリギリのコンディションだったところに、滞在地からの乗り継ぎ便で機材トラブルによる遅延が発生し、1時間以上立ったまま搭乗を待つことになりました。この想定外の負荷と、先が見えない心理的なストレスが重なり、そのフライト中に、体調が崩れてしまいました。
コルチゾール不足のときは、ある程度決まったパターンの症状が出ることが多いのですが、このときは様子が少し違っていました。今まで感じたことがない強い疲労感に加えて、胸痛や不整脈、息苦しさと低酸素感も重なっていました。
5mgのコートリルを服用し、座席をフルフラットにして横になって過ごしました。すると、いつもコルチゾール不足が補われたときと同じように、30分ほどで状態を立て直すことができました。
海外を飛行中の機内でコルチゾール不足の状態になることには恐怖もありましたが、私の場合は、完全に横になって身体の力を抜くこと自体が回復にとても有効なので、結果的には、この環境で対処できたのは幸運だったようにも感じています。
ただ、一度ここまで消耗してしまうと、すぐに通常通り動ける状態には戻れませんでした。降機後の出国手続きや手荷物検査、ラウンジへの移動、そして次の搭乗までの移動も、空港のスタッフのサポートを受けながら進めることになりました。ラウンジでの軽食も旅の楽しみのひとつですが、現地のハブ空港では食欲がなく、何も口にすることができませんでした。
日本までの国際線の移動は約6時間だったため、搭乗の約1時間前に、追加でコートリル10mgを服用しました。5mgにするか迷いもありましたが、今回は脈や呼吸にも影響が出ている状態だったことを踏まえて、安全重視で10mgを服用する判断をしました。
帰国するフライトの機材は、前の便と同じでフルフラットになる座席だったため、横になって過ごすことができました。少しでも睡眠時間を確保したかったので、アメニティに入っていた耳栓を使ってみたことで、それなりに深く眠ることができました。
私の場合は、眠ることで身体のバランスを整えながら回復している側面があるため、深夜便での移動や、十分な睡眠時間を確保できない状況では、コートリルの補充が必要になる場面もあるのかもしれないと感じました。帰国後、不整脈の精査も兼ねて受診したH先生からも、深夜便での移動時は、あらかじめコートリルを服用しておいた方がよいとのお話がありました。
少し眠ったあとの機内食は、それなりに食べることができました。完全に回復した状態ではありませんでしたが、その後は体調を大きく崩すことなく、家路につくことができました。
自発が戻りつつある今の状態では、コートリル10mgを一度に服用することはほとんどありませんが、今回は、あのタイミングで服用していなければ、機内で再び同じような状態になっていた可能性もあったのではないかと思います。
今回の旅でのコートリル使用は、初日の移動で5mg(2.5mg×2回)を服用し、現地では必要時に2.5mgで対応していました。そのうち3日間は2.5mgのみで過ごすことができ、1日だけ7.5mgまで服用しました。また、コートリルを全く飲まずに過ごせた日も3日間ありました。
帰国日は想定外の負荷もあり、合計15mg(5mg+10mg)を服用しましたが、帰国後は今日まで16日間コートリルなしで過ごせていて、日常生活も元のペースに戻っています。
9日間の旅程だったため、足掛け1週間を超える期間でコートリルの服用はありましたが、必要最低限に留めていたことと、あえて飲まない日を作っていたことも良かったのか、副腎機能の抑制による変化は感じずに過ごせています。