第113話「クリーゼの予防」 診断から3年9ヶ月

副腎皮質機能低下症の闘病で一番大事だったのは、副腎クリーゼの予防でした。
そして、この取り組みは今でも続けています。

2025年10月にPubMedに公開された「日本の副腎皮質機能低下症の患者を対象としたリアルワールドデータ」では、副腎クリーゼの発生状況と定義がまとめられていました。対象となった9,523人のうち、581人(およそ16人に1人)が副腎クリーゼを経験しているそうです。年間あたりに換算すると、1人あたり0.02回前後とされていて、日常的に頻繁に起きるものではないものの、起きた場合のリスクは小さくないことも知られています。

最近の研究では、軽度の機能低下で日常はコートリルを使わずに過ごせていても、感染や発熱などのシックデイでは、見合ったACTHを分泌できず、副腎クリーゼに至る可能性があることが示されています。

資料出典:https://doi.org/10.57554/2025-0088

これを読んで、今の自分はまさにこの状態に近いと感じています。

私の場合は分泌予備能があるので、副腎クリーゼまで一気に進む可能性は高くないと言われていますが、意識が落ちるようなところまでは進みやすい体質だと感じています。診断時のインスリン負荷試験(ITT)でも自力で血糖を持ち上げられず、ブドウ糖でレスキューすることになったので、低血糖にもなりやすいタイプなのかもしれません。

なので、今でも副腎クリーゼの予防はかなり意識して過ごしています。

副腎クリーゼ予防の組み立て方

副腎クリーゼの予防については、これまでもいろいろ試行錯誤してきました。「コートリルを追加するタイミング」ばかりに意識が向いていた時期もありましたが、それだけでは安定しないどころか、かえって不安定になることもあました。

「ヤバい」と感じたら追加する、という繰り返しでは、その場しのぎの対応になりやすく、全体のコントロールは安定しませんでした。

そんな中で出会った、欧米のコミュニティで共有されていた図解がかなり役立ちました。

資料

この図を見ると、副腎クリーゼがどうして起きるのかが、ひとつの流れとして理解できるようになりました。単に体調がバラバラに崩れるというよりも、それぞれの不調がつながりながら進行していくものだと分かるようになりました。そのうえで、副腎クリーゼに近づいた時の状態を、具体的に言語化できるようになりました。

たとえば、副腎クリーゼに近づくときは、コルチゾール不足を起点に、血糖・消化器・電解質といった複数の要素が連鎖して崩れていくことが多いと言われています。なので、

  • 低血糖になりやすいなら、日頃から血糖を安定させる
  • 消化器が弱いなら、胃腸に優しい食事に見直す
  • 電解質が乱れやすいなら、日頃の栄養や水分補給を意識する

このように、あらかじめ弱い部分を補強しておくと、明らかに体調が崩れにくくなる実感がありました。

私がプラスした工夫

私の場合は、甘いものを控えることで血糖が安定しやすくなり、小麦やカフェインを控えることで胃腸の状態が整いやすくなりました。カフェインを控えることで、電解質も安定しやすくなっているように感じています。この対策を続けることで、日常生活ではコートリルをほとんど使わずに過ごせるようになりました。

今考えると、結果的に理にかなった対策になっていたみたいです。

コートリルを飲むしかないこともある

それでもコルチゾール不足になってしまった時は、コートリルを追加するしかない場面もあります。
ただ、それを繰り返す形にはしたくなかったので、

  1. そもそも不足にならないようにペース配分して暮らす
  2. それでも予防しきれない時やシックデイの時だけ、コートリルをしっかり飲む
  3. その頻度が高くならないように、記録して振り返る
  4. それをもとに、コルチゾール不足の予防の精度を少しずつ上げていく

この流れを繰り返していくことで、少しずつ安定して過ごせる時間が増えていきました。

資料

私の場合は、比較的早い段階でコートリルの追加に頼る頻度を減らすことができました。そうして過ごしているうちに、何らかの原因で抑えられていた分泌予備能が動きやすくなってきたのか、数値も体感も少しずつ上向き、日常は頓服で過ごせるようになって、今に至っています。

ただ、診断が消えたわけではありません。今も強いストレスや感染症、炎症がある時には注意が必要な状態です。そして、この病気は私のように軽症でも、副腎クリーゼのリスクがゼロになるわけではありません。

人それぞれ経過は違うと思いますが、自分なりの予防の形を見つけて、自分のポテンシャルの中で良い状態を維持していくことが大事なのかなと思っています。



2026.3.23
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