第56話「スタートライン」 診断から1年9ヶ月

HPA軸に詳しい精神科医の著書によると、ストレス(肉体的負荷やメンタルを含む)に強いということは、ストレスに弱い人と比べて、コルチゾールを出さずに同じ行動ができるということだそうです。副腎機能が健康な人の「コルチゾールを出さずに」は、副腎皮質機能低下症にとっては「コートリルの追加なしで」という意味になります。

私はACTHが上手く出せない体質なので、なるべくコルチゾールを無駄に消費しないライフスタイルを心がけて、適量補充の模索からの断薬成功という道を通って今に至ります。結果的に、吸入薬を含め体に入れるステロイドを完全にゼロにでき、コートリルでコルチゾールを補充せずにできる範囲の、適度な運動を習慣にすることができました。

でも、これはゴールではなく、私の新しいスタートラインです。

今後は「ストレスに強いHPA軸を育てる」ことを目標に、最低限のコルチゾールで高負荷なアクティビティができるように、少しずつ鍛えていこうと思っています。最初は「HPA軸を鍛えるなんて本当にできるの?」と半信半疑でしたが、理論や科学的な裏づけに沿った方法がきちんとあることを知りました。

世界的ベストセラーとなっているスウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセン氏の著書には、「スマホ脳」「ストレス脳」「運動脳」などがあり、HPA軸・視床下部・扁桃体・海馬といった脳の働きや、コルチゾール・ドーパミン・GABA・BDNFなどの神経伝達物質の関係が、科学的な視点からわかりやすく解説されています。実際に読んでみると、スマホやSNSの使い方、運動や睡眠といった日常の行動がHPA軸やストレス反応にどのような影響を与えるのかが明確に示されていて、体調管理や回復のヒントを多く得ることができました。

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ハンセン氏は、HPA軸を整えるためには薬ではなく生活改善が最も有効だと説いています。デジタルデトックスには睡眠薬のような効果があり、運動には抗うつ薬のような効果があるとされ、実際に不眠症やうつ病の患者が薬を使わずに回復するケースもあるそうです。これは、HPA軸の機能障害を抱える副腎皮質機能低下症の体調管理にも通じる考え方だと思いました。

薬に頼らずに整えられる方法があるのは体にも優しくて、副作用の心配もありません。睡眠の質を上げたり、心の調子を整えたりするような小さな習慣でも、HPA軸が働きやすい状態に近づいていくように感じています。



2024.4.11
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